耳がゾワゾワする。
海外に来て、こんな目に遭うなんて。
「名前は?」
私を見つめる視線が、外国人と話していた時と全然違う。
なんか、
甘くて…酔いしれそう…
「い、り…」
「ん?」
「市村梨莉です…」
Ichimura Riri
名前を言うだけなのに、何だか顔が火照る。
こんな自己紹介、会社関係とかじゃ当たり前なのに。
「Riri…か…」
「はい、
市場の市に、村。
果物の梨と、茉莉花の莉で…市村梨莉」
梨莉なんて、珍しくて、とても言いづらい。
ってか、名字だけで良かったのかも。
「僕は、
太鞠麟汰だ」
Tamari Rinta
Tamari…?
聞いたことがあるような無いような。
こんな格好いい人を、忘れるハズも無いしなぁ。
気のせいか。
「市村梨莉さん…」
「は、はい!?」
急に低い声で呼ばれたから、声裏返った!
最悪……………。