「そうだな……固かったな」
北村先生が言える話じゃないと思うけど。
「なかなかに冗談が通じなくて、大変だった」
「そうなんですか」
「ただ、真面目だったからね。生徒にも親身に接したり、教師の中でも重要な役についてたりした」
「なるほど……」
今の事を頭に叩き込む。
だが、覚えられるものではない。
訊くことは訊いた。
私達はお礼を言い、北村先生に背を向けた。
「杵島」
後ろから掛けられる、低い声。
途端に涼の肩がはね上がる。
彼は首の壊れた人形のように、カクカクと先生の方を向いた。
「ちょっと残っていきなさい」
「……ハイ」
反論する余地なし。
さらばだ、杵島涼。
訊く口実とはいえ、多少の罪悪感が生まれる。
私達二人は涼を北村先生に預け、職員室を後にした。


