「何で田中先生は殺されたんだろうね?」
ポツリと涼が呟く。
それに対し、紘子は頬杖をついて答える。
「やっぱり、恨まれて殺されたんじゃない?」
「仲がいい人も少なかったって言ってたしね」
ふむふむと彼が頷く。
そして、次の質問を投げ掛ける。
「じゃあ、どうやって?」
「そんなの、私が知るわけないじゃん」
「それもそうか」
「多分、犯人との間で揉め事があって、まあ、なんやかんやあって殺されたんだろうね」
「なんやかんやって」
静かな議論が二人の中で行われる。
涼はクスリと笑うと、大きく伸びをした。
「今日もあの先生のところに行くの?」
「行くよ。昨日、話が中途半端で終わっちゃったからね」
「分かった」
涼は一つ頷くと、自分の席へ戻っていった。
「恵美的にはどうなの?」
紘子が話を振ってくる。
私は眼鏡を押し上げた。
「そりゃあ、空気中の分子がなんやかんやあって結合して、田中先生を殺したんだろうね」
「……聞かない方がよかった」
失礼な。