「朝から悄気(しょげ)た顔してどうしてなのさ?新学期くらい、明るく行こうや」

「……」

私を見下ろす、少し吊れた目。
首を動かす度に靡く、ショートカットの黒髪。
恐ろしい事実を何一つ分かっていない、無垢な瞳。

「ねぇ、紘子(ひろこ)。君は知っているかい?」

「何を?」

「赤点課題のテスト、今日だってさ」

「……」

一時停止。

再生。

「え?ごめん、聞こえなかった。もう一回言ってくれる?」

「だから、赤点課題のテスト、今日だってさ」

「……」

何も言わずに私を見てくる。
次の瞬間。

「嘘だっ!!」

「現実」

「知らん。知らない。そんな話、絶対に認めない!」