「何かね、こっちの方を見下ろしてる人がいたんだ。何か視線を感じて俺が上を見たら、慌てたように頭引っ込めたんだ!
で、もしかしたら犯人じゃないかって思って追い掛けた」
「それで?」
「見失った」
しょぼんと眉と口許を下げる涼。
そして、彼は言葉を続ける。
「だから、ついでに調理室にも行ってきた」
「何があった?」
「何も。調理室の鍵は掛かってるし、何が起きたのかも分からない。
その代わり、四階の踊り場の手すりに血がついてた。そんで、こんなにも落ちてたよ」
そう言って彼が取り出したものは、血のついた裁ち鋏だった。
タオルに包まれているものの、凶器には変わりない。
思わず、涼から一歩距離を置く。


