「な、何……」
いつもだったら気になんか留めない。
しかし、今日は違った。
嫌な感じがする。
「恵美?」
「ごめん!」
「ちょっと!」
カバンを放り投げ、階段の方へ走り出した。
後ろの方で物音がしたが、今はそれどころではない。
「……!」
東階段に着き、目に入ったもの。
赤。
強烈な鉄の臭い。
うつ伏せに倒れる人。
顔はこちらを向いている。
田中先生の時と同じ状況。
でも違う。
今回は先生ではない。
それは――
「――清水くん!!」
着くなり、紘子が声をあげる。
紘子に呼ばれ、現実に引き戻される。
顔を歪め、私は彼女の方を見た。


