先生はゆっくりと首を振り、少々申し訳なさそうにした。
「悪いんだけど、それは言えない。確認とらなくちゃいけないこともあるし……」
「高橋さんに、ですか?」
今度は涼が訊く。
先生は頷きつつ、腕時計を一瞥した。
そして、小さく溜め息をつく。
「この時間だったら、もう帰っちゃったかな……」
廉の事だろうか。
事態が急展開且つ深刻に感じる。
ここは、意地を張っている場合ではないだろう。
誰にも気付かれないよう一つ頷き、口を開く。
「先生、あの――」
廉の居場所を話そうとした瞬間、職員室のドアが開いた。
タイミング悪すぎる。
「藤原先生、少々よろしいですか?」
洋介先生に声をかける先生の表情も、何やら深刻そうだった。


