あんな奴、もう知らない。
勝手にすればいいんだ。
「恵美……?」
紘子が恐る恐る顔を覗き込んでくる。
私は笑顔で彼女を見た。
「何かな?」
「恵美、変だよ」
「どこが?」
「全部」
「……」
全部とは失礼な!
と言い返したいところだったが、精神的に言える状況ではなかった。
やはり、紘子に隠し事はできない。
涼を一瞥すると、彼も眉を下げ首をかしげる。
「大丈夫?」
「うん。大丈夫」
あまり、この事には触れないで欲しい。
助けを求めるかのように、先生の方を向く。
彼は廉のメモを指で追いながら、渋い顔をしていた。
そして一言。
「彼、何もやらかさなければいいんだけどなあ……」


