「これ、藤原先生に渡しておいてくれませんか?」
「これは?」
「先生に頼まれていた物です。いつだか、先輩にも話したでしょう?」
「あぁ、先生に怒られてこいって言われたやつか」
「そうです」
一つ頷く廉。
私はそれを受け取り、ようやく彼の顔を見た。
廉は微笑んでいた。
それでも、どこか怒っているように見える。
違う。
眉が下がっている。
アレか、哀れんでいるのか。
「廉、やっぱり――」
「それでは、オレはこれで失礼します」
言葉を遮り、廉が頭を下げた。
そして、私の隣をすり抜ける。
「待って!」
廉の背中に向かって、声を発する。
彼は、少し苛立たしげに振り向いた。


