いや、そんなことはない気がする。
その言葉は、口を継いで出ることはなかった。
彼の目が怖い。
いつもなら穏やかな彼の目が、すっかりと冷めきっている。
マズイ。本気で怒らせてしまったらしい。
廉の尋常じゃない空気を感じ取ったのか、後ろの二人も黙り込むのが分かった。
そして。
「あー、庄司?俺達、先に藤原先生の所に行ってるね!」
それだけ言い残すと、彼らはそそくさとその場を去っていった。
うん。そりゃあ逃げるよね。
逃げたくなる気持ちもよく分かるよ。
私もこの場から逃走したいよ。
怒った廉と二人きり。
怖いよ。すんごい怖いよ。
彼から目を逸らす私に向かって、廉は静かに告げた。


