紘子が嬉しそうに手を振る。
美紀も嬉しそうに振り返してきた。
「どうしたの?」
「世界史分かんないところあったからさ、藤原先生に聞きに来た」
「なるほどね……」
美紀の前には、積み上がったファイルと開きっぱなしの資料集とプリント。
プリントには、数多の付箋が貼り付けてある。
まさかここまでまとめたのか……
「それはそうと、新井ちゃんはどうしたの?」
「ん?私は先生に用事があって」
そう答え、紘子は洋介先生の方を見た。
彼女の言いたいことを感じ取ったのか、先生の顔が一瞬だけ強張った。
そして先生はチラリと腕時計を確認し、紘子に告げる。


