「俺が思うにね、死体を見付けたあの日から、大丈夫なことなんて何一つ無かったんだよ」
職員室に向かう途中、涼が私に向かってボソリと言った。
この言う様子からして、私が渋ったことを紘子は彼に伝えたらしい。
ちらりと前を歩いている彼女に目を向ける。
「大丈夫な事なんてない。もう、引き返せないんだ」
「……うん」
涼に押され、ゆっくりと足を進める。
怪我をした足が、少し痛んだ。
洋介先生は、今日も生徒と話していた。
見覚えのある生徒の後ろ姿が目に入る。
向こうも気がついたのか、振り向いてきた。
「おぉー!!新井ちゃんにりょうやん!恵美も久しぶり!」
「久し振りだね、美紀!」


