「ケイ兄は悪くないんです。私たちを逃がそうとしてくれたんです」
「どういうこと?」
紘子の言葉に、高橋さんが眉を寄せる。
そして、ポケットから分厚い手帳を取り出した。
「ケイ兄、洋介先生に話を聞きに来たんです。それなのに、私たちが講堂へ寄り道したから……」
「なるほどね……で、そこであの死体を発見したと」
「はい。それで、講堂の椅子の下に入っている程だから、学校側が隠してきた事だろうって。
そんなものを見付けた私たちは、確実に退学処分になるだろうって」
「……」
「だからケイ兄、逃がしてくれました。彼は悪くないんです。私たちが、余計なことをしなければ……」


