もどかしそうに顔を歪めて下を向いていると、不意に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「お疲れ様です!高橋刑事!」
「お疲れ様です」
高橋刑事……?
その言葉を聞くや否や、紘子が勢いよく顔をあげた。
驚いて彼女を見る。
「高橋さん!」
「あれ?君たち、どうしたの?」
「ケイ兄……ケイ兄は大丈夫なんですかっ!?」
紘子は高橋さんに詰め寄り、彼の肩をガシッと掴む。
高橋さんは目を丸くして彼女を見つめた。
「ケイ兄、私たちのせいで……もし、クビになってたら……」
紘子の言葉から、力がどんどん抜けていく。
私は黙って彼女を見守ることしかできなかった。
紘子の尋常じゃない様子を見て、高橋さんは何かを悟ったらしい。
彼女の肩を抱き、道路の向こうを指差した。
場所を変えよう、と言うことなのだろうか。
私は涼と顔を見合わせ、黙って高橋さんについていった。


