「おっそいなあー」
涼が小さく愚痴を溢す。
それに対し、紘子は溜め息をついた。
「何であの時、高橋さんの電話番号訊いておかなかったんだろう……」
「確かに……そうすれば、待ち伏せする必要もなかったのに」
彼はそうぼやき、空を見上げた。
9月なのに、日差しが鋭い。
容赦なく、私たちの体力を奪っていく。
頬を流れる汗を拭っても、きりがない。
「……」
最早、誰も喋らなくなった。
水分補給を繰り返し、ひたすら待つ。
どれくらい経ったのだろうか。
ようやく、話し声が学校内から聞こえてきた。
私達ははね上がるように立ち上がり、玄関を見る。
ぼちぼちだが、警察官が出てきているのが分かった。