花形さんの声に促され、私達は講堂を追い出されていた。
振り返って彼を見れば、ニッコリ笑い、親指を立ててグッドの合図。
全くよろしくないんだけどなあ。
「新井、ここは去るべきだよ。花形さんの好意を無下にするわけにはいかない」
「でも……」
「それに……何かまだ庄司泣いてるし」
「え?」
紘子が私の方を向く。
涼の言う通り、悲しくもないのに未だ私の涙は止まらなかった。
怖いものを見たからかもしれないが、よく分からない。
私を見た紘子は、小さく溜め息をついた。
「しょうがない。ここは去るか」
そう言って、彼女は名残惜しそうに講堂の入り口を一瞥すると、その場を去っていった。
私たちも、素直に彼女について行く。
後ろから沢山の足音が聞こえてきたが、振り返る事はなかった。


