「なんで……」
意味もなく涙が流れてくる。
怖いのか、それともショックからなのかよく分からない。
「田中先生の持っていた腕って、彼女のだったんだね……」
紘子が小さく呟く。
そっと足元を見てみる。
上履きであるサンダルに『松葉』と書かれていた。
「アカネさん……」
この子だったのか。
行方不明になってたというのは。
気が付けば、紘子が背中を撫でてくれていた。
彼女だって辛いだろうに、申し訳ない気持ちになってくる。
「大丈夫?」
「うん……」
今は、そう答えるのに精一杯だった。
正直、周りの事を心配できる余裕なんてない。


