ガトーショコラの事なんかすっかり忘れた私達は、花形さんを連れて職員室へ向かった。
花形さんは珍しいものでも見るかのように、辺りをキョロキョロと見ていた。
くたびれたスーツに薄いコート。
少しツンツンした頭。
特徴的なたれ目。
涼より少し広い肩幅。
何と言うか……いくつなんだろう、この人。
階段を上がり、紘子についていく。
彼女は職員室へ向かわず、何故か講堂の方へ歩いていった。
「え?何で?」
涼が不思議そうに首をかしげる。
そんな彼に向かって、紘子はいたずらっぽく笑った。
「どうせこっちの方が近いんだし、講堂の方から先に見てみようと思ってね」
「なるほど……まぁ、こっちの方が先に終わるしな」


