「ねぇ紘子、怖いから行こうよ」 彼女のワイシャツの袖を引っ張り、早くその場を去ろうと促す。 しかし、彼女は張り付いている男性に向かって歩いていった。 「新井、止めとけ!」 涼も必死で止める。 だが、彼女はそれでも足を止めない。 二、三歩間隔を開け、紘子の後をついていく。 彼女は一旦外に出ると、男性の肩を叩いた。 「危ないから止めろっ!!」 私と涼が同時に叫ぶ。 それでも構わずに、紘子は振り向いた男性に向かって声をかけた。 「怪しすぎだよ。中に入って、事務室の人に訊けばいいのに」