紘子はニヤリと笑うと、私のメモ帳とペンを引き寄せた。

「一つ分かったことがあるんだ」

そう言いながら、メモ帳に一つの言葉を書いていく。

『こうどうダメ』

何も書いていない、真っ白なページの真ん中にポツリと書かれたその文字。
何だか急にその文字が怖く感じた。

「何が分かったの?」

「杵島涼、まだ分からないの?」

「そのフルネーム呼びどうにかなんないかな!」

涼の異議を右から左へ流し、彼女は再びメモ帳に目を向ける。
そして、文字を丸でぐるりと囲った。

「だから、『こうどう』が『ダメ』なんだよ!」

「うん。紘子、それは見れば分かるよ?」

「まだ分かってないのか……」