「……」
ようやく本題だ。
私はペンを持ち、メモ帳を開いた。
涼も真剣な顔で観葉植物の隙間から見える、彼女たちを見ている。
やがて未来ちゃんが、おずおずと話し掛けた。
「先輩、講堂の噂って知っていますか?」
「講堂の噂?」
おうむ返しに訊く。
すると、未来ちゃんは少し嬉しそうに声が高くなった。
「あのですね、講堂から夜な夜な女の子の泣き声が聞こえてくるらしいんですよ」
「それ、本当なの!?」
「はい。現に、演劇部の子が数人聞いています」
「……」
紘子が押し黙る。
涼も息を呑み、私はペンを動かした。
「まぁ、単なる噂なので信憑性は無いですけど。それでも、面白いと思いませんか?」
「確かに……」


