チャイムが鳴り終わり、余韻が階段に響く。
「……」
何も起きない。
階段を見上げるも、人が来るような気配はしない。
「やっぱり、か」
紘子が残念そうに溜め息をつく。
彼女は階段に背を向けた。
「調べ損だよ。やっぱりデタラメなんだ」
どこか悲しそうな背中に掛ける言葉もなく、私達も踵を返した。
その時、地面に衝撃が走った。
何かが打ち付けられたような音もする。
何事だと思い、私達は振り向いた。
「――!」
言葉が出ない。
こう言うときは大声を上げるべきなのか、その場から逃げるべきなのか。
私達は、一歩も動けずにその物体を凝視していた。


