「あ、いや!あの、例の事件って保健室の先生も知っているのかなーって……」
挙動不審。
ああ、さらば私の人生。
もう怪しい目で見られるに違いない。
先生から目を逸らし、棚に積まれた薬諸々を見つめる。
あぁ、気まずい。
「――うん、知ってるよ」
軽い声が、保健室に響く。
それに流され、先生を横目で見る。
先生は笑っていた。
「僕はあの先生が嫌いだった。先生と言うか、一人の大人として憎かった」
「……」
すごい殺害動機になるような事口走ったぞ。
大丈夫なのか、この先生。
「もう今は亡くなってしまったから、あの事が起こる心配は無いと思うけど……」
「うん……?」
「僕は、アカネの時のようなことを、もう起こしたくないんだ」
そうして、先生はどこか物悲しげに笑った。


