「そう言えば、先生って田中先生と仲がよろしくなかったと訊いたんですが?」
「……!」
先生の顔色が変わる。
しまった。いきなり核心を突いちゃった。
先生は顔を歪め、小さく息を吐いた。
「まぁ、ね。先生にも事情ってものがあるんだよ」
そりゃあそうだ。
「他に訊きたいことはないかい?」
田中先生については、これ以上触れられたくないと言う顔をしている。
しょうがない、他の質問をしてみるか。
「そう言えば、先生」
「何かな?」
「そのメモ帳、何ですか?」
さっきからパラパラと捲っているメモ帳を指差す。
先生は、よくぞ気付いてくれましたと言わんばかりの笑みを私に向けてきた。
「これね、次の部誌のテーマだよ」
「テーマ?」
「うん。今回のテーマは"黒猫"。それでよろしくね」
「分かりました」
「庄司さん、意外と人を追い詰める力あるよね。たまには、探偵小説とか書いてみたら?」
「お断りします!」
私にはそんな推理物を書く頭もないし、ファンタジー専門なんだ。


