丹下 龍太郎対佐倉 寒緋。

両者はリング中央で向き合う。

「……なーんか敵意剥き出しじゃねぇか?アンタ」

くたびれた白の空手着、朽ちた黒帯、裸足。

腰に手を当てたまま、龍太郎は訝しげな顔をする。

そりゃあ方々で暴れている身としては、他人に恨みを買う事もあるかもしれないが。

「まぁいい印象は持ってないな…積年の恨み…というとちと大袈裟だがね」

扇子『神器・望月』の先端を顎に当て、口端を引く寒緋。

その冷笑は、どのような意味を持つのか。

「それはそうと…」

困ったように寒緋の胸元を見る龍太郎。

「もちっとキチンと着物着れねぇのかアンタ。試合中にポロリしたらどうすんだ」

「……」

龍太郎の言葉に。

「ぷふっ!」

寒緋は思わず噴き出す。

「『臥龍』の間に随分と初心な事言うようになったんだな」