ひどいことを言ったエックスという男を私は睨んだ。
できれば視線だけで殺してやりたかった。

「ん?んだよ。こえー顔しちゃって。勃ちそうになるだろ?」

下品な笑が気持ち悪かった。
こんな男に姉が侮辱されるのが許せない。

「もしかして処女ってとこに納得がいかねーの?俺だいたい女見たら、やってるかやってないかわかるから、異論はねーはずだぜ?」

ぎりっと唇を噛み締める。
仕方がないだろう。
今まで生まれてこのかた男に興味を持ったことがないのだから!

「この顔で処女というのも珍しいですよねぇ。エックスさんのセンサー間違えてるんじゃないですか?」

優男が私の方へ近づいてきて、私の髪をつかみあげた。

「いたっ」

顔から判断できないほどの強い力だった。
上品そうな口調とは裏腹な乱暴な仕草。

「ゆなっ!!妹には手を出さないで!!」

姉の悲痛な叫びが狭い部屋に響いた。

「おやおや、麗しい姉妹愛ですねえ。春子さん」

男の手は私の顎を掴んだ。
ぎりぎりと長い爪が私の肌に食い込む。

「アイ、顔に傷つけるな」

栗色の髪の男が鋭く一喝した。
それに従いアイと呼ばれた男は私から手を離した。

「・・・はぁ、はぁ」

恐怖と緊張で私の息は切れていた。
しかし頭の中は異様に働いている。

(どうしてお姉ちゃんの名前知っているの)

つまりこれは確信犯なのだ。
私たちが誰なのかを知った上でこの人たちはさらった。
理由や目的がなになのかは知らないが、とにかくここから逃げなくてはいけないことはよくわかった。

「ふむ、とりあえず姉の方を移動させよう」

「えっ」

眼鏡の男の言葉に唖然とした。

(そんなの、やだっ)

そう思い、身体をよじり精一杯暴れようとした。
しかし、できなかった。

栗色の髪の男の大きな手が私の肩を押さえつけたのだ。

「暴れたら犯す。嫌だったら大人しくしていろ」

私の顔は絶望に引きつった。