私はこの作業が嫌いではない。
むしろ、好きだ。
なぜだかわからないけど、また新品のようにピカピカの紺色にもどった黒板消しが好き。
叩いていると、1日の嫌なこともはたき出されるみたいで。
ぱん、とまたひとつ、私は強く粉を撒き散らした。
「夕ー美!!」
「修子。ごめん、今すぐ終わらせる」
「ほーんとあんた、その仕事ばっかりやってる」
「だって、好きなんだもん」
「ま、いーけどね。なんでもいいから早く帰ろー」
くああ、と猫のようにアクビをして、廊下に出ていく修子。
修子の長い髪が、サラリと揺れた。
黒髪が、光に当たってキラキラ茶色に輝いている。
カラカラ、と窓を閉めた。
真新しいもののようにピカピカなそれに満足し、もとの場所に戻して。
修子のあとを追いかけた。
―――――日差しが強く、教室内に射し込んでいた。
