「あ、この曲好き。かけていい?」
「うん」
私の返事を聞くより早く、修子の指が再生ボタンをタップする。
また違った曲調の、次はしっとりとしたメロディー。
窓のカタチに四角く切り取られた空にもう一度だけ目をやって、目を閉じた。
―――――修子、音大きすぎ。
***
ぱん、ぱん、ぱん。
放課後清掃の時間。
真面目にやっているのはごく一部で、男子なんかは机に座って昨日のサッカー中継の話をしていた。
なぜか、私たちのクラスには黒板消しクリーナーがない。
一年のうちは手を使え、ということなのか、それとも偶然か。
とにかく、黒板消しクリーナーは1-Cの教室にはないのだった。
ぱん、ぱん、ぱん。
真っ白く汚れた黒板消しをふたつ、叩き合わせて汚れを払う。
窓から身を乗り出すようにして、一定のリズムで。
たたき出された粉が舞って、ケホ、と小さく咳き込んだ。
