ぽかぽかの春が過ぎて、季節は夏。

七月に入ってから気温がぐんと上がり、制服を着るのも億劫で……。


「暑いよ~……」


朝から出る言葉はそれしかなかった。

制服をだるだると着てリビングに向かうと、テーブルには一枚なメモ紙が置かれていた。

見なくても分かる。お母さんからだ。

母は夜型の仕事をしているせいか、会えるのはいつも夜。

朝は常に寝ているからこうして謝罪のメモがあるんだ。


『いつもごめんね、由紀。お弁当作ったから食べてね』

毎度同じ台詞で、言われても無いのに聞きあきた。

いや、この場合見飽きたか。


「……作ったなんて、嘘のくせに」


だいたい分かる、キッチンのゴミ箱を見れば、ご丁寧にそのまま買ってきたパックがそのまま捨てられてるんだから。

せめて隠してたら別だったかもね。

そうこうしているうちに時間も無くなって来て、仕方なく私は作られていない詰められただけの弁当を手にして家を出た。


「いってきまーすっ!」


わざと大声を上げて。