「そしてこのノートに初めて願いを書いてくれたのは君だ。由紀」

俺の話を聞いていた由紀に顔を向けると、涙を両手で拭っていた。

「由紀……なぜ、君が泣くんだ」

「ごめんなさいっ! 私、何も知らなくて……っ。真白さんを傷つけてっ……! 最低ですね、私……」

最低? 君がか。

俺には由紀が最低な人間には見えなかった。


「君は優しいな」

「え?」

「俺の話を聞いて泣いている。それを最低だと俺は思わないよ」


寧ろ嬉しいとかんじている。

あんなにも話すのが嫌だったのに、今は何処か清々しい。


「……君に話を聞いてもらったからか」

「真白さん?」


涙を大きな瞳から溢しながら、由紀は顔をあげる。

俺はその涙を指で拭ってやった。


「由紀が友達で良かった、と言ったんだ。それよりもう泣くな。折角の可愛い顔が台無しだ」

「か、かわっ……! 冗談は止めてください!」

「まさか」

「ま、真白さん!」


泣いていたかと思えば顔を赤くして怒る君は、とても可愛らしいと思った。