そうか、ここは下界。

人が浮いていたら気味が悪いに決まっている。

俺は一旦立ち止まり地に足が着くようにしてみたが、ちっとも足が付かずずっと浮いたままだった。

困った……。これじゃ外を歩けない。

それどころか、俺は此処で生活するのも一苦労じゃないか。

悩みに悩んで居たとき、父さんの言葉を思い出した。



『人を幸せにする魔法』


「人を、幸せに……」


今の俺に欠けている物だ。

両親を亡くした悲しみを抱き、自分の幸せなど考えられなかった。

゙俺の魔法は、人を幸せにする為にある"

そうだ、俺は真っ直ぐな白い光、

闇に阻まれ立ち止まる訳にはいかないんだ!

俺はそう決意して、暫く人間観察を続けた。

そこである事に気づいた。

ここの人間は夢を持っているのに叶えられないでいる。

ならば、


「俺の魔法で願いを叶えれば良い。きっとそれは良い事だ」

俺のやろうとしている事は間違いではないはず。

そう思い、俺は何もない空気から白いノートを作った。

それはノートに書かれた願い事が俺の元に届くようにする、魔法のノートだ。

俺は街中にノートを置き、願いが書かれるのを、廃墟になったビルの屋上で浮きながら待っていた。

皆が幸せになる事を祈りながら――。