真白さんの魔法


全ての授業を終えて、待ちに待った放課後がやってきた。

相変わらず数学や英語はちっとも理解出来なくて、私のテンションはがた落ちだ。

教室でのんびり読書をしようと、机から本を取り出す。


「あれ? ゆっきー。今日私らとマック行くんでしょ?」

「え? そうだっけ?」

「ん? あ~……そか。ごめん。読書の邪魔しちゃって!」

「まだ読んでないから、大丈夫だよ。じゃあバイバイ」

「う、うん。バァイ! ゆっきー!」


朱美は私の顔を見ずに、教室の外で待っていた人達の輪へと入って行った。

きっと朱美は皆が私を誘ったんだと思ったんだろうな。

朱美は優しいから、嘘はつけない。

けど、このなんとも言えない仲間外れの関係を直す気もないんだ。

だって朱美も自分を守る事で必死だから。

学級委員長だって、周りから親しまれてても、決して全員から好かれている訳じゃない。

朱美は繊細だから、これ以上関係が崩れたらって想像してるんだろうな……。


「……やっぱり、帰ろう」


私は本を机の中に閉まって、鞄を肩にかけて教室を出た。

玄関を出てとぼとぼ歩いていると、ふいに白い物体が地面に散らばっているのを見つけて、私は思わず足を止めた。

よく見ればそれは今朝見掛けたノートの紙だった。

周りを見ればそこら中に破られたノートの紙が散らばっている。


「ひどい……ノートが……っ!」


私は散らばった紙を全て拾い上げ、筆入れの中からホチキスを取り出して端を止めた。

ぱちぱちと三ヵ所止めて、見開きにする。


「たしか、ここだったよね?」


私は返事のしないノートを校門の前にふ、と浮かせる。

けどそれは力なく落ちてしまった。

私は仕方なくそれを持ち帰る事にした。

捨てられるよりは、まし……だよね?