真白さんの魔法


監獄の中は錆び臭く、嫌な空気が漂う。

何故だとかどうしてだなんて事を思うのを止めた。

今は両親を殺した犯人が誰なのかを探るために、頭をフル回転させていた。

思考を巡らせていると、遠くで悲鳴じみた声が聞こえた。

なんだ? と思っていると、カツカツッ! とリズムよく靴を跳ねてくる音が近付いてくる。

その足音が俺の前で止まった。


「よー、真白ぉ。監獄の中で泣いてんのかぁ?」


嫌みたらしく言う黒い影……。

黒に身を包んでいたのは、真黒だった。

この男は何かと俺に挑んでくる。

そんな彼が俺を助けに来るわけがない。

からかいに来たのだろう。


「つーか、お前の悲痛の叫びっての? かなりウケたぜ! お前ってどうしようもねぇ屑な奴なんだな!」

「くず?」

「そーだろ? 家族なんつー生温いもんにすがって、自分じゃなぁんも出来なかった。屑野郎だろ?」


真黒が連呼する屑と言う言葉がやけに引っ掛かった。


「けどよー、俺的には最高なもんだったぜ。お前の両親が特に笑えたぜっ! 一人息子を守る為に、自ら死を選ぶとかな!」

「その口振り……まさか! 犯人はお前かっ!?」

「今更遅ぇよっ!」

「なっ!?」


俺が座っていた床にぽっかりと穴が空いた。

その下は下界。しかし距離的に生きる可能性は低い。

真黒は狂ったように笑う。


「これで漸くこの世界は俺のもんになる! 邪魔なてめぇはもういらねぇんだよ!」


真黒が魔法で風を吹かせると、俺は抵抗できないまま下へと落ちた。

最後に見た天界は、真っ暗な闇に飲み込まれていた。