真白さんの魔法


魔法が効かないなんて……っ!?

嘘だ、嘘だ! それじゃ本当に二人が死――


「真白」

「真白……」

「「生きなさい」」


聞こえなかった声。

けどそれは俺を包み込む様に響き、俺の体が光に包まれる。

それは二人の優しさだ。

俺の大好きな父さんと母さんの温もり。

あぁ、どうして。

俺の前からいなくなるんだ。

いやだ、まだ……まだ一緒に居たい。

俺はまだ父さんと勝負をしていないじゃないか。

男同士の話も、親としてのプライドも、俺はまだ何も教えて貰ってないじゃないか。

俺は母さんの手料理を沢山食べた。

ずっとじゃないけど、母さんが料理をする所を見てきたから、俺の手料理を振る舞いたかったんだ。

だって明後日は二人の結婚記念日だから。

俺の料理を、二人はまだ食べてないじゃないか!

昨日まであんなに楽しそうに、笑ってたじゃないか……っ!

明後日俺は二人に言おうと思っていた言葉もある。

それを言わないうちに死ぬだなんてっ!

あんまりだっ!

いやだ、まだっ、まだ俺は失いたくない!


「やめろおぉぉ―――っ!!」


そんな俺の叫びも届かず、二人は崩れてきた校舎に巻き込まれた。

残されたのは俺を包む柔らかい光だけだった。