何も変わらない日々が、ずっと続くと思っていた。

毎日の様に女に囲まれ、関係のない時に魔法を使い、両親が学校の先生である事を羨まれる日々が。

俺は確かに学校一の魔法使いだが、余り嬉しくも無かった。

女に囲まれても、ちっとも楽しくもない。

両親に誉められた所で俺の何かが変わる訳じゃない。

それでも俺はそんな日々を送っていた。

だがある日、変わらない日常が大きく変わった。

それはある魔術の時間に起きた。


『おい、真白! 俺と勝負だ! 今日こそ俺が勝つ!』


俺に声を掛けた威勢の良い男の名は、御崎真黒(おざき まぐろ)

名前の通り姿も性格も真っ黒な奴だった。


『……今日だってお前は勝てないだろう』

『んだとてめぇ!?』


真黒はキレて魔法をぶっ放つが、俺には一度も当たらない。

というよりも、一度も当てた事がないのだ。


『くそっ、くそっ! 避けてねぇで勝負しろ!』

『俺はムダに魔法を使う主義じゃない。お前には、これで十分だ』


俺は人差し指で狙いを真黒に向け、くん、と上に上げた。


『ぐぁっ!?』

俺の攻撃を諸に食らった真黒が、後ろに倒れる。


『いくら強い魔法を使っても、当たらなきゃ意味がないだろ』

『ちっ』

俺はそのまま真黒を放って姿を消した。

だが、それが甘かった。

あの時俺は真黒の様子が変だとは思わなかった。