教室に入れば、朝から元気にはしゃぎ回る男子達。
それに負けじと女子の会話もボリュームを上げながらヒートアップ。
朝が苦手な私にとっては迷惑極まりないんだけど。
「あ、ゆっきー! おはーっ!」
私に声をかけて来たのは、このクラスの学級委員長、永倉朱美(ながくら あけみ)だ。
朱美はどんな人とも仲良くなれる長所を生かして、学級委員長になり、引っ込み思案の私にも声をかけてくれる。
とても男らしく優しい人だ。
「おはよう、朱美」
「あれ? 由紀ちゃん元気なくね?」
「どった、どった? 飴ちゃん食べるか?」
「あ、ありがとう。菜々さん、瑠璃さん」
朱美と一緒にいた二宮菜々(にのみや なな)と坂上瑠璃(さかじょう るり)に心配されてしまった。
私は顔を赤くしながら礼を言う。
それにしても、私はそんなに元気のない顔をしてたかな?
「またお腹でも壊したか? まだ春なんだから腹だして寝んなってあれほどお母さん言ったのにっ!」
「ちょっ! 私、お腹出して寝てないよ! てか朱美は私のお母さんじゃないでしょっ!」
「由紀ちゃん超マジツッコミ!」
「ウケる! 由紀ちゃん可愛い!」
可愛いくないよーっ! と必死に否定していると、担任の先生がやってきて、みんながいそいそと席に戻る。
煩かった教室が静かになって、漸く私は溜め息をついた。
一番後ろの窓側の席が私の日常。
今日も先生の長い話を両耳で受け流して、ただ青い青い空を眺める。
(そうあえばあのノート、一体なんだったんだろう)
散々無視をしてきたノートが今更になって気になったけど、帰れる頃には無くなっているかも知れない。
非日常を望んでた癖に、いざ目の前にして無視をしてしまった自分の頭を軽く叩いた。
