真白さんの魔法


「冗談だ」

「顔がまじでしたよ……」

「俺は金が欲しくてやってる訳じゃない。このノートだって叶えられるのは一度だけだしな」

「そうなんですか?」

「あぁ。そんなに叶ったら、腐った人間になる」


確かにそうかも。

人は欲には勝てない生き物だ。

何回も願いが叶ったら、人として最低な人間になる。

真白さんは変態な割りにちゃんと考えてたんだ。


「まぁもし貰えるなら……笑顔だな。俺は由紀の笑った顔が良い」

「え? そ、そんなので良いんですか?」

「あぁ」


今まで、本心で笑えなかった。

もう笑えないって思ってた。

けど――。


「真白さん! 本当にありがとうございますっ!」


貴方に出会って私は本心で笑えた。

ありがとう、真白さん。

貴方のお陰で私、もう一度前を向いて行ける気がします。


「帰るか。家まで送るから、こっち来い」

「えぇっ!? まさか、またお姫様抱っこですかっ!?」

「それ以外どうしろと?」

「肩に担ぐとか、おんぶとかあるじゃないですか」

「却下。づべこべ言ってると置いてくからな」

「わ、分かりましたよぉっ!」


私は真白さんに抱えられながら、綺麗な星空を走った。

目映い星が近くに感じて、私はドキドキしっぱなし。

けどそれはきっと、この星だけじゃない……って思うんだ。

私はもしかしたらもう会えない真白さんを、しっかりと目に焼き付けた。