真白さんの魔法


「君はこのノートを拾ってくれたからな」

「あ、それ! ……けど、お礼を言うほどの事はしてないですよ?」

「してくれたよ。ボロボロになった紙を、君は本心で拾ってくれたじゃないか」

「み、見てたんですかっ!?」


私は恥ずかしくなって、両手で頬を隠した。


「いや、このノートから聞いたんだ。君の心はとても真っ直ぐなんだ、無くすな。大事にしてくれ。そしたらきっと、君は前を向いてられるだろう」

「真白さん……」

「と、このノートが言ってる」

「ノートさんが?」


ただの紙の塊。

なのに、私は嬉しくなった。

もしかして、私の質問にも答えてくれてたのかな?


「そうだ、君の名前は? 聞いてなかった」

「今更ですね……。私の名前は桜田由紀です」

「そうか。由紀、ノートを拾ってくれてありがとう」


それは、今まで感じたことのない感覚。

真白さんが笑った瞬間、体に電撃が走った。

どうしてか分からないけど、顔に熱が集まる。

私、顔赤いかも……。


「あ! あの、魔法の報酬とかあるんですか?」

「報酬? そんなのはいらない。だが、どうしてもと言うなら、パンツを貰おうか!」

「真顔で力説しないでください! 変態!」


折角の甘い雰囲気が台無しだよ。

この人が変態だって事を忘れてた。