木々の騒めきが静まっていく。 波が引くように鬼気が消え、蒸し暑いが平穏な明け方が戻ってきた。 美しい鬼は着物の裾を翻し、片膝をついて唖然としたままの薫の前に降り立った。 「案ずるな。 そなたにもこの阿呆にも、危害を加えるつもりはない。 妾はジジィとやらに会いにきたのじゃ。」 「あ… ハイ。 え?オニ?ナニ? この美人…」 熱に浮かされたような薫の呟きに、項垂れたままだった景時が勢いよく顔を上げた。