「っ! 待っ…」


自らの醜態に悶々としていて、警告が遅れた。

慈龍寺の周囲には、幾重にも結界が張り巡らされている。
景時ら僧が狩りで用いる、ヒトの侵入を防ぐ結界とは性質が異なるモノだ。
ヒトには無害だが、闇の者なら…弾け飛ぶ。


「危な…」


景時が慌てて仰ぎ見ると、彼女は前で結った帯に挟んであった扇子を、いつの間にか手にしていた。
スピードを保ったまま、開いた扇子を華麗に振るう。
舞っているかのような優雅な一挙。

しかし効果は絶大だった。
全ての結界が、一瞬で爆ぜたのだ。