しかし、満ち足りただらしない顔で意識を手放そうとする景時を、彼女は許さなかった。


『跪け、景時。』


もうピクリとも動かないはずの躰がのろのろと持ち上がり、彼女の前に両膝を着く。

いやいや…すでに心ごと君に跪いちゃってるからね、俺。

彼女の美しい顔が近づいてくる。
景時は髪を引かれ首を仰け反らせたまま、恍惚と目を閉じた。

ゆっくり迫る牙を、景時は見なかった。
でも、わかっていた。

彼女は美しいオニなのだから。

肩に食い込む牙。
引き千切られる肉。
焼けるような熱さ。


「くっ…あぁぁっっ!」