(本来なら、敵だよね?
喰ったり狩ったりすンだよね?)


情けないような、くすぐったいような…嬉しいような思いで、景時は微笑んだ。


「うん、ありがと。
気をつける。」


その言葉を聞くなり、女は景時に背を向けて、再び窓際に歩み寄った。


「え?
待って、待って。
ドコ行くの?」


「案ずるな。
じき、呪は解ける。」


もう興味は失せたとばかりに焦る景時を振り返ることなく、女はガラスの嵌まっていない窓枠に足をかけた。


「ちょ…
待てって、頼むから!
君の名前も…」


「そなたに名乗る名などない。」


冷ややかに言い放ち、女は夜空に身を踊らせた。