乱れた呼吸と長めの赤い髪を整えながら、一歩ずつ、彼女に近づく。


「月が好きなの?」


一歩、また一歩。


「好きではない。」


心地よく響く低い声に、駆け寄りたい衝動がこみ上げるのを堪えて。


「そんなに見てるのに?」


もう少し。
並んだ。
手が届く。


「月は、人を狂わせるほどの魔力を秘めていると聞く。
妾はその毒に侵されておるのであろうな。」