真夜中で良かった。

行く手を遮るものがないから。

周囲の景色が溶けて見えるようなスピードで、景時は疾走る。

絡んでくる暴走族を軽くブっちぎって、疾走る。

ひょっこり出てきた野良犬を驚かせながら、疾走る。

どれだけスピードを上げたところで、彼女に追いつけはしない。
遠くなる銀色の光に舌打ちしたくなるほどの焦りを感じたが、繁華街を抜けた辺りで、景時はふと気づいた。


(コッチの方向って…)


月を見上げていた彼女。
彼女が去った後に残された、今夜と同じ丸い月。


(賭けるか。)


目的地は決まった。