肩を掴まれ、後ろに引かれた。

強い力に体勢を崩し仰いだ夜空に、長く尾を引く銀色の目映い光。


「!」


景時は瞬時に体勢を立て直し、屋上の手すりに足をかけて薫を振り返った。


「ありがとう。」


薫は目を見開いた後、照れたように笑った。


「いいから、行け。
逃がすんじゃねぇぞ。」


薫に軽く頷いて、手すりを強く蹴りだし、景時はそのままマンションから飛び降りた。


「縛鎖!」


2、3度ベランダの柵に雷光を放つ鎖を引っかけて衝撃を軽減しつつ、用意しておいたバイクの隣に降り立つ。

ヘルメットも被らず、いきなりアクセルを全開にされて悲鳴を上げるバイクにまたがり夜の街に消える景時を、薫は見送った。