「で、五年後、おまえがここに来たってワケだ。」


傾いてゆく月が、昔話の長さを語っていた。

だが景時は流れる時間を感じることもできず、声を失ったまま凍りついていた。

誰からも祝福されないオニの子?

『赤光』?

俺が?


「うっそだぁ…」


「嘘じゃない。」


小さな呟きは、即座に、だが柔らかく否定された。


「だって…
母さんいつも笑ってたし。」


「幸せだったンだろ。
バカップル全開だったしな。」


「だって…
オヤジの記憶なんてないし。」


「忘れてンだろ。
ゼンキが千景の傍を離れるとは思えない。」