「よぉ、傷はもういいのか?」


風呂上がりなのだろう、作務衣姿で髪を濡らしたままの秋時が振り返った。


「肋骨はまださらし巻いてっケド、他は治った。」


景時はゆっくり隣に腰を降ろし、秋時を見ないまま頭を掻いた。


「そのー… ごめん。
色々、心配かけちゃって…」


「全く、な。
勝手に寺を抜け出すわ、勝手に死にかけてるわ、挙げ句の果てには鬼神なんてとんでもねぇの、お持ち帰りしちゃうわ…
俺の寿命、縮める作戦か?」


「ゴメンナサイ。
そんな作戦、あるコトも知りませんデシタ。」


「こりゃ、アレだな。
血だ。
お前の母親の千景(チカゲ)も、ちょっと目を離すと、とんでもねぇコトしでかすジャジャ馬だったわ。」


困ったように笑う秋時は、少し寂しそうにも見えた。