月が綺麗だから、と月見酒に誘われた。


(や、俺ってば病み上がりだし。
ソレ以前に未成年だし?)


仮にも僧侶のクセに、そんなんでイインデスカ?

秋時の待つ障子を開け放した本堂に、景時は足を踏み入れた。

足を組んで座し、お猪口を片手に夜空を見上げる秋時の後ろ姿。

月も酒もただの口実。
そんなことはわかっている。

『真の己を知るがよい』

彼女に背中を押され、今夜知るのだ。

本来ならとっくに死んでいるらしい、『赤光』である自分のことを。