「騒がしい。
美しい夜に、無粋なことよ。」


鬼気を追って最上階の展望フロアだったであろう場所に降りてきた景時は、凛とした声を耳にした。
落ち着いた、少し低めの…しかし明らかに女性の声。

あら?ヒト?結界は?鬼気は?

あらら?オニだよね?
なんでグガグカ言ってないの?
まじでヒト?

目にしたのは標的の大きな背中と、その向こうに広がる夜景。
声の主はオニに隠れて見えない。

オニにしろ、ヒトにしろ、まだ喰われてはいない。

間に合ったと言えるが、かなりの危機的状況だ。