『グーデンベルク技術課長の娘さんの戒音さん?』


綺麗な黒髪の優しそうな女性が話し掛けてきた。


『確か、日本語は話せると聞いていたから・・違ったかな?』 


女性は自分とあまり歳は違わないように見えた。


はにかんだ笑顔はすごく綺麗で、同性の私も恋に落ちそうなくらい綺麗だった。

『初めまして・・戒音グーデンベルグです』


一生懸命の作り笑いで。


『私は、小山田麻帆(おやまだまほ)貴女のお父さんの携わる、宇宙装機と言われている、パワードスーツ型の宇宙作業機械のテストパイロットで、大学2年です、よろしくね』


真帆の屈託のない笑顔につられて笑った。


差し伸べた手はやわらかくて暖かかった。


桜の舞散る季節に、日本に私は入った。


この時はまだ宇宙装機は試作段階であり、開発が急がれていたのだった。


小山田真帆は私の作り笑顔をみると、急に口を膨らませた。
そして、私のホッぺをつまみ広げた。


『戒音さん、作り笑いは良くないなぁ、笑うなら心から笑いなさい』


完璧に笑顔を作ったはずなのに・・・
心の中を見透かされている感じがした。
その透明に透き通る瞳に見えているのかな?


私は何だか少し恥ずかしくなると同時に、真帆のその表情に笑ってしまった。


『戒音さん、笑顔綺麗だよ・・作り笑いは、大人になってから嫌でもつくるわけだから・・・今は思いっきりに笑うの』 


それが、小山田真帆との初めての出会いだった。


まるで透明な澄んだ水のように清々しく、そして暖かかった。


私は彼女の目指す宇宙に興味を持った。